鹿の王 水底の橋【小説】あらすじと感想レビュー ホッサルのその後

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シンカ
シンカ

こんにちは、元司書のシンカです

今回は『鹿の王』番外編の『水底の橋』を読みましたので感想を書きます。
厚さは【420ページ】と、今までのボリュームからすると厚くはありませんが、内容は濃く考えさせられることが多い作品でした。
民族同士の確執や、宗教の考え方の違いなど。
異世界もののファンタジーですが、現実にも起こりそうな問題であることは上下巻の本編からあまり変わっていません。
今回は『鹿の王』本編のその後という位置づけですが、2人いた主人公のうち医術師のホッサルのみに視点を当てており、ヴァンやユナは登場しません。
彼らが下巻のあとどのような状況になったかは語られることがなく、ストーリーの中心は医術師のホッサルと助手で恋人のミラルになっております。
ぜひ、最後までご覧ください。

 

見解の相違で治療が変わる?東乎瑠帝国の医療問題


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『鹿の王』水底の橋の概要

 

『鹿の王 水底の橋』の著者は上橋菜穂子さんです。
角川書店から出版されており、単行本ではあとがきまで含めると【422ページ】になります。
文庫版は【2020年】に発売されており、ちょうどコロナ禍でパンデミックだったころに発売されたのかと思うと、感慨深いものがあります。
著者の経歴については、『鹿の王』上巻でまとめておりますので、そちらをご覧ください。

 

 

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 『鹿の王』水底の橋のあらすじ

旦那氏
旦那氏

サブタイトルは『みなそこのはし』と読みます。
すいていのはしと勘違いして読んでたけど、読み方はみなそこだった 確認大事ですね。

 

シンカ
シンカ

また、本編の上下巻はAudibleがありましたが、この水底の橋はないようです。

 

 

今回はオタワル医術を手がけるホッサルを中心に、東乎瑠帝国の清心教祭司医との見解の相違や議論など、考えさせられることが多い物語でした。
どちらがいいかと言われるとなんとも言えない。

黒狼熱(ミッツアル)大流行の危機が去り、東乎瑠帝国では、次期皇帝争いが勃発。
様々な思惑が密かに蠢きはじめているとは知らず、オタワルの天才医術師ホッサルは、祭司医真那(まな)の招きに応じて、恋人ミラルとともに清心教医術の発祥の地・安房那(あわなりょう)へと向かう。
ホッサルはそこで、清心教医術に秘められた驚くべき歴史を知るが、思いがけぬ成り行きで、次期皇帝争いに巻き込まれていき!?
ふたつの医術の対立を軸に、人の命と医療の在り方を描いた傑作エンタテイメント!

出版社より引用

本編と同じく登場人物は紹介されていますが、なんと今回は、鹿の王の地図まで載っていました。
…これを…これを、本編にも載せてくれたらわかりやすかったのに…!

 

 



『鹿の王 水底の橋』の登場人物

今回は清心教側、オタワル医術側、清心教医術の発祥の医療など東乎瑠帝国の歴史を辿るお話でした。

 

  • ホッサル…二百五十年前に滅びたオタワル王国の末裔で、天才的な医術師
  • ミラル…ホッサルの助手で恋人
  • カオラ…オタワル聖領の<奥仕え>
  • 真那(まな)…清心教の祭司医
  • 梨穂宇(りほう)…真那の姉
  • 津雅那(つがな)…清心教の宮廷祭司医で、次期、宮廷祭司長の最有力候補出版社より引用

 

『鹿の王』水底の橋の感想


 

清心教医術とオタワル医術の違いと、見解の相違を目の当たりにした考えさせられる内容でした。

今回は本編からズレた地方に行ったのでちゃんと地図がついてたのかな?
むしろ本編にこそほしかったけれども。

 

ホッサルについて

滅んだ国オタワル王国の生き残りであり、後継ぎという非情に悩ましい立ち位置。
昔から馴染みの恋人、ミラルがいるけれど、彼女はオタワルの平民であるため貴人のホッサルとは身分が合わないため結婚はできない。
ミラルもそのことをわかっており、その上で付き合っているという微妙な関係ですね。もちろん、親も祖父もミラルとの関係は知っているけれど、ホッサルには別な釣り合う女性を、というところでしょうか。
どこでも身分差やしがらみはあるもんだなあ、と複雑な気持ちになりました。
ずっと付き合っていたいし熟練夫婦みたいになってるけれど、祖父からは別の結婚を迫られていると。
もちろん縁談や見合いの話も多々あるけれど、ミラルがいいからのらりくらりとかわして結婚を避けている状態ですね。
ミラルにとっては、生殺しの宙ぶらりん状態というところでしょうか…。
ホッサル、しっかりして!と言いたくなる感じです。
ミラルもホッサルの助手だから、医療現場的にはいないと困るんだろうなあ。
ホッサル、しっかりして!
どちらかというと、しっかりしているのはミラルの方。
ただ、ミラルも遠慮している部分はあると思うから、やっぱり煮え切らないホッサルの態度ですかね。
ホッサル!しっかりして!

 

 



清心教医術とオタワル医術の違いについて

清心教医術は、東乎瑠帝国の宗教と密接に絡み合っているので、神の教えを元に治療しています。
しかし、安易に神の教えにするのではなく、きちんとオタワル医術と共存する姿勢や、身体のしくみを理解している感じもあります。
ただ、新しく祭司長の候補として挙げられている津雅那(つがな)は、反オタワル医術であり、古流の薬を使うことを極端に嫌います。

 

  • 病は穢れたものが身体に入り込むため、病に罹ったものは穢れている
  • 動物などの血を使う薬は穢れている
  • それを使うと死んだときに安らかに神の元へ行けなくなる
  • 死にかけている者には安楽死を

ということで、まだ生きているうちから葬式の準備を始め、お香を炊くことであの世に行きやすくするというなかなかショッキングな治療をされておりました。
生きてるうちから自分の葬式の準備を見るのは嫌だなあ、と感じたものです
東乎瑠帝国の皇帝那多瑠帝は、清心教医術でもう助からないと言われた皇妃を諦めきれず、オタワル医術に頼って救ってもらったという経緯があるので、那多瑠帝はオタワル医術については寛大です。
ただ、次回の祭司長になるかもしれない津雅那は反オタワル医術であるので、迫害されるかもしれない、と。
なかなか状況は厳しいようです。
東乎瑠帝国とオタワル王国の関係、オタワルの内情、宗教の違い。
複雑に絡み合ってホッサルとミラルの恋を邪魔します。
個人的には、真那とホッサルの『目の前に助けられる患者がいて助けないという選択はいかがなものか』という談義はとても面白かったし、興味深かったです。

イベントが起こるとなにかが起こる

本編でもそうでしたが、要人のイベントで何か予期せぬ事件が起きることが多いです。今回は次期皇帝候補が2人、『鳴きあわせ、詩あわせ』というイベントに参加したことから事件が始まります。
皇帝候補なので、どちらかが蹴落とそうとしても仕方ないとはいっても、あの方法は…。しかも本人が「ねえねえ、好物食べてないけれどどうしたの?」的なことを直に聞いてるのがとても嫌でしたねー。
あとから読むと恐ろしいセリフだな、と思いました。

ところで、『鹿の王』っていうわりに作中鹿が一匹も出てこない件について。

やっぱヴァンがいないと鹿は出てこないですね。

 

 



ミラルについて

ミラルは、最後の行動があっぱれなので、ぜひ読んで頂きたいですね。
ミラルは元々好きなキャラでしたが、この本でより好きになりましたよ…。
マコウカン以上かもしれない(笑)。

まとめ

  • 鹿の王 水底の橋はヴァンではなく、ホッサルのその後
  • ヴァンやユナは登場しないので、下巻のその後はわからない
  • ホッサルとミラルの恋愛事情
  • 次期皇帝争いに巻き込まれる
  • お国柄、お家柄の争いや宗教問題があり複雑な部分がある

今回は東乎瑠帝国とオタワル王国(滅んでる)の宗教問題、医術問題と政治や時事問題に近い話がありあまりファンタジーな感じがしませんでした。
裏返ったりしない分、本編より現実味があるかもしれません。
宗教問題は現実でも起こっているので、考えさせられる内容でした。
気になった方は『鹿の王』上巻から読んでみてくださいね。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。

 



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