『鵼の碑』単行本のあらすじと感想レビュー 百鬼夜行シリーズ最新刊 

ミステリ
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シンカ
シンカ

こんにちは、元司書のシンカです。

今回は、私が学生時代から読んでいるシリーズの一つである、『百鬼夜行シリーズ』の最新刊『鵼の碑』が2023年9月14日に発売されたので、意気揚々と購入しました。
いつもは講談社ノベルスの新書版で購入していたのですが、旦那氏が「新書版でいいの?単行本を買わなくていいの?」と再三煽って来ましたので、つい単行本を購入。待ちに待った、17年ぶりの新刊です。読む方も気合が入ります。
今回は単行本で購入したため、『ページ数1280ページ、厚さ6.5cm、重さ1,2キロ』と公式が公言しているもので、読むのに重すぎて机の上や膝の上で読まないと腱鞘炎になりかねない重さの本です。
読み応えは充分すぎました。シリーズを読んでいない方にもオススメできる最新刊となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

17年ぶりの百鬼夜行シリーズ最新刊の化け物は『鵼』。


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『鵼の碑』の著者について

『鵼の碑』の著者は京極夏彦さんです
1963年生まれで、北海道の小樽市出身の方です。
日本推理作家協会監事を務められ、世界妖怪協会・お化け友の会代表代行を務められております。
1994年「姑獲鳥の夏」で衝撃的なデビューを飾ります。1996年「魍魎の匣」で第49回日本推理作家協会賞長編部門、1997年「嗤う伊右衛門」で第25回泉鏡花賞、2003年「覘き小平次」で第16回山本周五郎賞、2004年「後巷説百物語」で第130回直木賞を受賞されております。
2011年「西巷説百物語」で第24回柴田鎌三郎賞を受賞しておられます。
2016年には遠野文化賞を受賞されており、2019年埼玉文化賞を受賞されております。

2022年「遠巷説百物語」で第56回吉川英治文学賞を受賞されています。
私は百鬼夜行シリーズと、嗤う伊右衛門から始まる『江戸怪談シリーズ』、『巷説百物語』シリーズを読んでいます。
百鬼夜行シリーズが発売されるということで、20年ぶりくらいに『姑獲鳥の夏』を再読しました。

 

 

 

『鵼の碑』はこんなあなたにおすすめ

京極先生のファンサービスがすごいので、作中で今までの事件がおさらいできます。シリーズを読んだことがなくても、『鵼の碑』から読んで全体を把握してからシリーズを読んでもいいと感じます。
シリーズを読んでいる人はニヤニヤすることでしょう。
忘れていても最初から復習できるのでありがたいです。

  • ミステリーが好きな人
  • 妖怪やお化けなどのホラーが好きな人
  • 古典が好きな人
  • 刑事ドラマが好きな人
  • 百鬼夜行シリーズを読んでいる人
  • 百鬼夜行シリーズを読んでいない人

 

 

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『鵼の碑』を読んだきっかけ

 

Xで講談社が告知を出していました。

そこで、30周年記念動画を見て単行本のページ数、厚さ、重量のスペックを聞いたのでございます。

これは、読まなければならない…!

以前山梨に京極先生が講演会に訪れたときには、『百鬼夜行シリーズの最新刊発売をお願いします』とアンケートの備考に書いた私です。

シリーズは通して新書版を読んでいた私は、今回も新書版で購入しようとしていました。が。

旦那氏
旦那氏

え?単行本買いなよ

17年待ったんでしょ

という旦那氏の悪魔のささやきにより、単行本を発売日に購入しました。

本屋では何件かハシゴしましたが、単行本を積んでおらず、新書版すら見かけません。

ポチッと購入ボタンを押したのですが、Xで『本屋で鵼の碑にブックカバーをしてもらうと書店員の腕がなる』と見かけまして、リアル店舗で買わなかったことを後悔しました。

仕方ないの、地方には京極堂が積んでなかったの…!

ネットは便利ですね。


『鵼の碑』のあらすじ

百鬼夜行シリーズは1994年から続くロングセラーシリーズです。
舞台は昭和29年と、戦後すぐの戦争から復興していく途中の時代が舞台です。
今回は日光を中心に物語が進んで行きます。

 

旦那氏
旦那氏

タイトルは『ぬえのいしぶみ』と読みます。

わざわざ『鵺』ではなく『鵼』という漢字にしたのも意味があるようです。

百鬼夜行シリーズ17年ぶりの新作長編がついに!

殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。
消えた三つの他殺体を追う刑事。
妖光に翻弄される学僧。
失踪者を追い求める探偵。
死者の声を聞くために訪れた女。
そして見え隠れする公安の影。
発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆は、
縺れ合いキメラの如き様相を示す「化け物の幽霊」を祓えるか。

シリーズ最新刊。

「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」

出版社より引用

旦那氏
旦那氏

ミステリーというより妖怪小説

 

シンカ
シンカ

学生時代の友人は普通に「妖怪小説」って言ってたな

 



『鵼の碑』の登場人物

百鬼夜行シリーズは、小説家や古本屋など本に関わる仕事をしている登場人物が多いです。そのせいか知識が豊富です。

  • 久住加壽夫(くずみかずお…劇作家。『鵼』が書けず、日光榎木津ホテルに缶詰めになっている
  • 関口巽(せきぐちたつみ)…数々の難事件に巻き込まれている小説家。日光榎木津ホテルに宿泊中
  • 桜田登和子(さくらだとわこ)…殺人の記憶を持つ娘。日光榎木津ホテルのメイド。
  • 御厨冨美(みくりやふみ)…行方不明者を探してほしいと薔薇十字探偵社に来た依頼人
  • 榎木津礼二郎(えのきづれいじろう)…日光榎木津ホテル経営者の弟。薔薇十字探偵社の探偵。
  • 益田龍一(ますだりゅういち)…薔薇十字探偵社の主任探偵…らしい。
  • 中善寺秋彦(ちゅうぜんじあきひこ)…中野で古本屋を営む。店の名を『京極堂』。神主の仕事もしている
  • 木場修太郎(きばしゅうたろう)…東京の刑事。関口の戦時中の部下。

 

 

 

『鵼の碑』単行本と新書版の違いは?

私は今回の『鵼の碑』を単行本で購入しましたが、読みやすさでは新書版の方が持ち歩きやすいです。

なんせページ数1280ページ、厚さ6.5cm、重さ1.2キロのダンベルの代わりになりそうな単行本です。

持ち歩けません。出先では持ちやすい文庫を読んで併読していたので、家でしか読めなかったです。

新書版なら832ページ上下段なので、持ち運びやすく出先でも『鵼の碑』を読むことが可能でしょう。

百鬼夜行シリーズに関しては『鈍器本』として有名ですので、832ページくらいではふうん、と思う程度です。(経験値)

実際にXの読書垢の皆さんは、単行本と出先用に新書版を購入している方もいらっしゃいました。

皆さん、さすがです。と思ったのは秘密です。

個人的には単行本の方がどっしりくるので好きですが、出先でも読みたい方は新書版の方がいいと思います。


『鵼の碑』単行本の感想


1.2キロの重量ですので持ち運びには向いてません。
しかし、この厚さこそ京極!!という謎の安定感があり、無駄に安心します。
江戸怪談シリーズで400ページ前後の小説がありましたが、
「…この人、薄い本も書けるんだ…」
という感想が真っ先に出てきたくらいです。
この、安定の厚さ。
電子版で読むのもいいんでしょうが、やはり百鬼夜行シリーズに関しては手をプルプルさせ、痺れさせながら読むのがオツなのですよ!(ヲタクの感想)
単行本で持ち歩けなかったため、読了までに随分時間がかかりました。
家でしか読めないので、例えば病院の待ち時間などは別の文庫を読みました。
17日くらいかけて読んでいました。
ここまで長いのに、最後まで飽きずに楽しめるのはさすがだと思います。

鵼について

旦那氏
旦那氏

鵼とは、頭は猿、胴は狸、手脚は虎、尾は蛇の怪鳥のことです。

諸説あるようですが、尾は狐だったり背が虎になっているものもあるみたいです。

虎鶫(とらつぐみ)という鳥の声に似ているので、虎鶫が『鵼』と呼ばれることもあります

また、正体がつかめない、はっきりしない物事・人のことを示す意味もあります。

今回の事件は、正体があやふやでバラバラな事件が、それぞれ繋がっていく様が面白いです。

文体が少し難しい

百鬼夜行シリーズや、京極作品には小説の冒頭に、ストーリーに関連のある妖怪の資料が載っていることがあります。
そのまま転載されているので、古典に馴染みのない方には難しく感じるかもしれません。しかしルビは振ってくれているので、全然読めないことはなく、少しとっつきにくいかな、と思う程度です。
ここは飛ばしたり絵だけみて物語に進んでも差し支えはないでしょう。
また、小説の登場人物が書いた日記や小説などは古い文体のため、読みにくかったり旧漢字の難しい字が出てきたりします。
調べてみるのも面白いかもしれません。
とりあえず章タイトルの猨がわからなくて、読み方を調べるアプリで調べました。
こんな字の「さる」とか見たことない。



関口について

今回はなぜか日光に来ていて、日光榎木津ホテルに泊まってるんだけどなんでこの人いるんだろうってくらいプラプラしている。
京極堂は古文書の仕事で久住さんは日光榎木津ホテルで缶詰になってたんですよ。
一応小説家…だよね?あんまり書いてるところを読んだことがないぞ。(笑)
でも、鬱気味の彼で事件に巻き込まれやすい性質なので、久住さんという友だちができたのは喜ばしいことです。
すごく一生懸命京極堂から聞いた話を久住さんに話してて微笑ましい。
とりあえず「姑獲鳥の夏」だけ再読しましたが、姑獲鳥ではわからなかった関口君も鵼の碑では人に教えられるくらいにわかってて成長した感があります。
一緒に久住さんの悩みを聞いてあげたり、お見舞いに付き合ってあげたり、ほっこりしました。彼はとてもよかったですね。

 

章タイトルは動物の名前

いくつかの事件があり、それぞれを別の方向から調べていくお話しですが、「鵼」が動物のキメラのような化け物であることから、それぞれの動物の名前がついています。
鳥、狸、猿、鵺などのタイトルで久住さんの創作ノートな感じで書かれています。
装丁も違ったりするので、見るのも楽しいです。…重いですが。

ミステリーだけどホラーテイスト

化け物をモチーフに物語が進んで行くので、たまにホラーチックになってびっくりすることがあります。が、京極の場合は人間が怖いよね、という感じなので幽霊の類はあまり出てきません。
が、「益田の後ろに女が立っていた」とか急にやられるとビビるわけですよ、不意打ちなので小心者の私としてはヒイ!となります。
それが百鬼夜行シリーズの醍醐味でしょうか。

 

榎木津について

榎木津については、もう少し活躍してもよかったと思います。
外国人とテニスや乗馬してる変な人でしかないわ。(笑)
一応京極堂の解説のときにもいたけどねぇ。
扇風機すら破壊してませんから、今回(姑獲鳥の夏で破壊してた)。
要所要所で昔のシリーズの話が出てくるので、時系列把握や状況整理には便利です。

 

 

まとめ

生きてるうちに新刊が出たので最近ではとても嬉しかったです。
帯を見たら次回作の予告もあったので、まだシリーズは続くようです。

  • 百鬼夜行シリーズ最新刊
  • 単行本はページ数1280ページ、厚さ6.5㎝、重量1.2キロというスペック
  • 持ち運びには向いてない
  • 持ち運びには同時刊行の新書版がオススメ(832ページ)
  • 京極堂があまり物語に絡んでこない

 

今回は待ちに待った『百鬼夜行シリーズ』の最新刊でした。
1280ページは普通の小説なら分厚いですが、このシリーズに関しては普通に思える、感覚が麻痺する鈍器本です。
もはや厚さに安心するレベルですが、肩こりや手の痺れには気をつけて読んでください。
シリーズを読んだことがない方でも入りやすい構成になっています。
気になった方はぜひ、読んでみてくださいね。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。


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