あなたは、【十二国記】シリーズをご存じでしょうか。
1991年にエピソード0の『魔性の子』を初めとした、古代中華風異世界ファンタジーです。もう30年経つんですね。噓でしょ?
今回はその最新作である、『白銀の墟 玄の月』まですべて読了したので、紹介して行きたいと思います。
これでシリーズ全て読破したのは嬉しいのですが、ボリュームがありすぎて何から語ればよいのかまとまっていないので、整理しながら書こうと思います。
壮大すぎてどこから語ればよいのやら
全四巻の文庫本ですが、読むだけで1年以上かかりました(笑)
シリーズ的には、今回はエピソード9です
ちなみに、タイトルは(はくぎんのおか くろのつき)と読みます。
まずは概要から行きます。
30年続くロングセラーシリーズ18年ぶりに出た待望の長編
白銀の墟 玄の月の著者について
『白銀の墟 玄の月』の著者は小野不由美さんです。大分県中津市生まれで、大谷大学在学中に京都大学推理小説研究会に在籍されていました。
1988年(昭和63年)に作家デビューします。1991年(平成3年)刊行の『魔性の子』に始まる『月の影 影の海』などの「十二国記」シリーズは、ファンタジー小説界に衝撃を与え、代表作となります。
1993年、『東亰異聞』が、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となり話題を呼びました。2013年、『残穢』で山本周五郎賞受賞。
その他著書に、「ゴーストハント」シリーズ、『屍鬼』『黒祠の島』『鬼談百景』『営繕かるかや怪異譚』など多数あります。
※小説の著書紹介を参考にしましたが、一部タイトルの漢字が変換できなかったため東京、になっております。
※後日スマホで東亰異聞って普通に打てたので修整しました。スマホすげぇ(笑)。
私は十二国記シリーズ、屍鬼、東亰異聞を読んでいます。
ホワイトハート時代から読んでいました。
白銀の墟 玄の月のあらすじ
故国に戻った泰麒の戦いが幕を開けます。
第一巻
戴国(たいこく)に麒麟(きりん)が還る。王は何処へーーーーー。
乍驍宗(さくぎょうそう)が登極から半年で消息を絶ち、泰麒(たいき)も姿を消した。王不在から六年の歳月、人々は極寒と貧しさを凌ぎ生きた。
案じる将軍李斎(りさい)は慶国景王(けいこくけいおう)、雁国延王(えんこくえんおう)の助力を得て、泰麒を連れ戻すことが叶う。
今、故国(くに)に戻った麒麟は無垢に願う。「王は、御無事」と。
ーーーー白雉は落ちていない。一縷の望みを携え、無窮の旅が始まる!
第一巻あらすじより引用
民には、早く希望を見せてやりたい。
国の安寧を誰よりも願った驍宗(ぎょうそう)の行方を追う泰麒(たいき)は、ついに白圭宮(はっけいきゅう)へと至る。それは王の座を奪った阿選(あせん)に会うためだった。しかし権力を恣(ほしいまま)にしたはずの仮王には政(まつりごと)を治める気配がない。一方李斎(りさい)は、驍宗が襲われたはずの山を目指すも、かつて玉泉として栄えた地は荒廃していた。人々が凍てつく前に、王を探し、国を救わなければ。ーーーだが。
第二巻あらすじより引用
今回は第一巻、第二巻までの驍宗捜索がミステリーのようになっていました。
なぜかパソコンの予測変換で、驍宗って一発で出て来て感動しています。
もっと苦労するかと思った(笑)
泰麒の方が一発で出てこないですね。
何故だ…本編だとほぼ出番なかったのに…。
白銀の墟 玄の月はつまらない?面白くなるところがある
十二国記シリーズは、状況の悪化から事態の好転までが長いので、少しつまらなく感じてしまうかもしれません。
十二国記シリーズに限らず、小野不由美作品は、事態が好転するまでが異様に長いです。
いかに今の現状が酷い状況なのか、ということを人を変え、土地を変え語っていく。
それが、今回は第四巻のうち、二巻までがいかに戴国がひどい状態なのかをゆっくりと語って行っています。
だからかもしれません。つまらないというより、読むのが辛い。
私も二巻の途中で挫折してしまい、数か月放置していました。
食べ物がなく、凍え死んでいく民を見ているのが辛かったんでしょうね。
しかし、事態は三巻で大きく動きます。
動きのあるところまで読めれば、あとは一気に読み進められます。
エピソード1の『月の影 影の海』でも、陽子が十二国に流されてから事態が好転するまでがものすごく長くて過酷だったことを覚えています。
それだけに、事態が好転していい方向に向かった時の面白さと、読んだ後の達成感はとても満足でき、ぜひ周りの人に勧めたい一冊になります。
白銀の墟 玄の月の感想【ネタバレあり】
十二国記は古代中華風の異世界ファンタジーで、日本や中国と稀に行き来することが可能です。
第一巻で蓬莱(ほうらい)から戻ってきた泰麒は【10歳】から【16歳】になっていました。
0歳で日本(蓬莱)に流され、10歳まで日本で小学生として過ごし、再び十二国の戴国へ戻ってきます。
10歳で麒麟として驍宗を王に選びます。
そして阿選の謀反により、11歳で蓬莱に流されたあと16歳になって戻ってくるのです。
日本と十二国の間には虚海という海で隔てられており、日本人や中国人などが稀に虚海から流されて十二国の異世界にやってきます。(日本人を海客、中国を山客と言う)
人が十二国へ流されるきっかけは『蝕』。
俗に言う台風です。実際に10歳の泰麒も蝕を起こし、蓬莱へ流れています。
驍宗と同じく将軍だった阿選に角を切られ、王が襲われて行方不明になってしまったのです。その後、驍宗のあとには阿選が仮王として起っていました。
…ここまでが、前回の『風の海 迷宮の岸』までのあらすじです。
今回の白銀の墟 玄の月は、泰麒を軸とした戴国の物語となっており、前作の『風の海 迷宮の岸』を読んでいる前提で話が進められています。
『魔性の子』まで読んでいれば前後関係が把握出来ると思います。
これまでの十二国記では王と麒麟の王宮生活のような、煌びやかな話がありましたが今回は戴国の極寒の中、食べ物がなく凍え死んでしまう民たちを描いているので、読むのに気合が必要でした。
18年ぶりに出た新刊ですが、陰鬱な状況が続き、お世辞にも楽しい小説とは言えない前半です。しかし、最後は報われるので、感動も出来るし、読んで後悔しない作品でした。
泰麒について
十二国記の中で麒麟は人型になると金髪であるっていう前提を覆しているのが泰麒。黒麒なので髪の色は金髪ではなく黒髪です。
だから日本人としても違和感はなかったんだろうけど、阿選に角を切られたせいで転変が出来なくて麒麟の姿になれないから、戻った時に普通の人と変わらないのでまずは間違いなく泰麒ですね、という確認から入ってます。
阿選に角を切られたから使令も使えないので、自力では泰麒だということを証明できないのかな。そこで苦労してましたね。
最後まで台輔が本当に泰麒なのかっていう疑問を持っていた輩もいるし。
10歳から16歳だと背も伸びるだろうし、顔つきも変わっていますよね。
大人になったなぁぁ…。ってみんなで言っててほっこりしました。
大人になってなおかつ日本でも色々あったから、それはもうタフになっている。
立派に戦っています。
自ら仇敵のいる白圭宮に乗り込み、戴の民を救おうとします。
なかなかうまくはいきませんし、妖魔を放たれて味方の魂を抜かれたりしますが、果敢に戦っていきます。あふれ出る色気。
それにしても、阿選の放った鳩に似た妖魔は、魂を抜かれるので本当に怖いです。
しばらく夜寝るときに鳴いてる鳩の声が怖くて耳栓してました。
小心者です。(笑)
泰麒の戦いが見れてとても面白かったです。
難解な漢字の山で、地名なのか人名なのかわかりにくい
十二国記シリーズと言えば、古代中華風ファンタジーですので、カタカナは一切出てきません。
ファンタジーというと登場人物はカタカナの名前を使いがちですが、登場人物の名前は全て漢字、地名も漢字。
ならばどうやって異世界ファンタジー感を出すのかといえば、文字の違いで雰囲気を表すというところでしょうか。
- 舎館(やど)
- 里塵(まち)
- 府第(やくしょ)
- 塵(むら)
- 園林(ていえん)
- 院子(なかにわ)
ここにあげたのはほんの一部です。
たしかに、これならAudibleがないのも頷けます。
紙の本で読まないと異世界感が出ないのでしょうか。
まるで歴史書を読んでいる錯覚になります。戴国で生まれ育った民のような気持ちになれます。
感情移入はばっちり出来ますので、気合入れて読みましょう。三巻までの辛抱です。
30周年記念ガイドブックのおかげでおさらいが可能に
本編でも、さらっと前回までのあらすじ的なものはありますが、なにせ前作が18年も前です。忘れてしまっている部分もあるでしょう。
私も魔性の子から読んでいますが、一度しか読んでいないのでぶっちゃけ忘れていました。そんな時に、30周年記念ガイドブックが出てくれたのです。
ありがたい…!
シリーズ各巻のあらすじ、用語解説、登場人物までまとめてくれています。
ちょうど第三巻を読み終わったタイミングで30周年記念ガイドブックが出たことを知り、おさらいができました。
著名な作家さんたちの感想や編集さんの体験談、最後に短編集などが載っていてとても楽しい一冊でした。
本家でこんなにまとめてくれたからここで登場人物もあらすじもあんまり書かなくていいわね、とか思った。
登場人物なんかは多すぎて上げきれないし、なんなら検索すると相関図が出てきて誰が誰の部下か、とか図で説明してくれている人もいるくらいです。
ありがとうガイドブック。
驍宗と阿選について
確かに、驍宗様が正当な王なんだろうけど登極から半年で行方不明になって六年も阿選が仮王だったら出て来ても今更感あるかな、と思ってしまった…。
でも四巻で自ら脱出した時にはさすが王様、と思ったし、これから反撃だー!
と勢い込んで読んでいたら希望からの急降下が激しい。
王様、せっかく出てきたのにいいところがあんまりないという悲しみ。
そんな、なんで捕まっちゃうんだ、残り100ページだけどどんどん雲行きが怪しくなるんだが…!
そして人が死に過ぎ辛い!しかも誰がどのように死んだのかしっかり説明してくれているから余計に辛い…!
戦争だし玉座奪還目指してるから当たり前だけど、人が死に過ぎて辛い。ものすごくリアル。まるで歴史書を読んでいるかのようなリアルさでした。
異世界チックなところは唯一、妖魔が襲ってくるところでしょうか。
神農だった彼が驍宗様の膝で看取られた時には泣きそうになりました。
阿選は偽王で玉座を奪った簒奪者だけど、七年も王様やってるし(途中で放棄してましたが)この人がしっかり王様やってくれてればよかったんですけどね。
目的が玉座獲るところまでだったから、もう燃え尽き症候群みたいになっちゃったんですよね。
阿選は阿選で思うところがあったし、自分に天命はこないしとっくに失道してることもわかっていたんですね。
余計驍宗様に反撃して気持ちよく引導渡して欲しかったけど、そうは問屋がおろしませんでしたね。
消化不良でしたが、最後は物語も終わったし、報われたのでよかったです。
でも、あそこまで兵士のひとりひとり、ピックアップしながら死に様を語るなら最後の十月の話までやってほしかったな、と感じます。
しかし十二国記シリーズの長編はもう書かないとのことなので、短編集などで読めたらいいな、と思います。
李斎(りさい)について
驍宗様よりも阿選よりも最初から最後まで活躍していたのが、女将軍の李斎。
主人公は泰麒のはずですが、四巻全てまんべんなく出番があった司令塔。
驍宗様を探すとき、最初は四人しかいなかったのが一万に膨れ上がったのは感動しました。…そこからの急降下は凄かったけど…。
彼女の騎獣、飛燕(ひえん)も毎回李斎を助けていたので最後は泣きそうになりました。騎獣ってやつは…!騎獣ってやつは!
お疲れ様でした。と言いたくなりました。
まとめ
- 十二国記シリーズエピソード9は四巻ある
- 前作からの続きなので、『風の海 迷宮の岸』は読んだ方がいい
- 阿選に玉座を獲られ、行方不明になってしまった正当な王と麒麟の奪還への物語
- 王の捜索から脱出までがめちゃくちゃ長い
- 最後は報われる
長い長い戦いでしたが、ようやく終わりました。
今後の十二国記シリーズが続くかは不明ですが、短編集が出るようですし、これからも読んでいきたい作品です。
これからシリーズを読んでみたい!という方は、ぜひエピソード1の『月の影 影の海』から読んでみてください。
最後まで読んで頂いて、ありがとうございました!
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