こんにちは、シンカです。
あなたは『縁結び』と聞いて何を連想しますか?
カップル?それとも、縁結びのお守りが買える神社?
『縁結びカツサンド』では、カップルだけではない街の人々の『縁』を結ぶパン屋さんを舞台にした物語です。
一旦別の道を歩んだはずの三代目が、パン屋を務めることができるのか?
自分のパンを作らなければいけないのか?
自信のないパン職人が、駒込の人々との関りを持ちながら成長していくほっこりできるグルメ小説です。
読み終わったときは思わずパン屋に走り、普段あまり買わないパンをたくさん買ってしまいました。
どれも美味しそうだから読み返すと太る気がする
「ベーカリー・コテン」の素朴な雰囲気なども楽しめる、おいしい小説なのでぜひ読んで頂きたいお話です。
ベーカリー・コテンの名前の由来は?だんだん自信をつけていく三代目も見どころ
『縁結びカツサンド』の著者について
『縁結びカツサンド』の著者は冬森灯(ふゆもりとも)さんです。
本作がデビュー作となり、【第1回おいしい文学賞】にて最終候補になっております。
他の著書に、『うしろむき夕食店』が重版になっています。
また、WEBで連載していた『うつくしき一皿』の最終話が公開され、3月半ばに『すきだらけのビストロ』『うつくしき一皿』として書籍になるとのことです。
🎪おしらせ🎪
Bunkamuraドゥマゴ文学賞さまWEBで連載させていただいた「うつくしき一皿」、最終話が公開されました🍽️https://t.co/Xtf1lRWDXI
連載を追いかけてくださったみなさま、ありがとうございました🙇♂️3月半ばに『すきだらけのビストロ うつくしき一皿』として書籍になります📘✨
— 冬森灯*Tomo Fuyumori* (@mashiro_mw) February 6, 2023
『縁結びカツサンド』を読んだきっかけ
『縁結びカツサンド』を読んだきっかけは、食べもの系のほっこりした小説が読みたいと感じたのがきっかけです。
最近、ミステリや恋愛小説で重たい小説を読んでいたので、食べ物が出てくるほっこり系の小説が読みたい、と思っていたところTwitterで『縁結びカツサンド』を知ったので読んでみることにしました。
読了ツイートでよかった、おいしそうだった、と感想を見ていたので興味を持ちました。
『縁結びカツサンド』のあらすじ
『縁結びカツサンド』は、商店街に店をかまえるパン職人が自信をつけていく物語です。
うらら商店街に佇む、昔ながらのパン屋さん「ベーカリー・コテン」。
あんぱん、クリームパン、チョココロネ。
気取っていない顔が並んでいて見ているだけでほっとするような、そんなお店。
一家で経営してきたコテンの未来を背負うのは、悩める三代目、和久。
商店街が寂れる中で、コテンを継ぐべきか。
「自分のパン」を見つけないといけないのではないか。
創業者のじいちゃんが亡くなって、「コテン」の由来もわからない。
日々迷いながらパン生地をこねる和久のもとには、いろんなものを抱えたお客たちがやってくる。
人の悩みに寄り添うパンを焼こうとする和久が、やがて見つけた答えとはーーーー。ちょっと疲れた帰り道は、「ベーカリー・コテン」が待っています。
しぼんだ心をふっくらさせるとびきりあったかな”縁”の物語。出版社より引用
『縁結びカツサンド』の登場人物
『縁結びカツサンド』は、商店街で起こる人間模様を描いた作品です。
- 段田理央(だんだりお)…システム会社勤務。人事担当
- 浅野秀明(あさのひであき)…理央の彼氏。
- 音羽和久(おとわかずひさ)…「ベーカリー・コテン」の三代目
まだ見習いな感じ。元フランス料理人 - 守田大和(もりたやまと)…就活生。なかなか内定が決まらずに悩んでいる
- 成田賢介(なりたけんすけ)…和久と仲のいい肉屋。妹のすずがコテンでバイトをしている。
『縁結びカツサンド』の感想
『縁結びカツサンド』は四話構成の短編で構成されており、どれも商品の名前がタイトルになっています。
第一話 まごころドーナツ
第二話 楽描きカレーパン
第三話 花咲くコロネ
第四話 縁結びカツサンド
どのパンも美味しそう!
普通のお惣菜パンですが、お客さんと結びついた名前になっていて、物語を読んだあとはなるほど、うまく名前をつけたもんだ…と感心しました。
真心ドーナツの話のその後が楽描きカレーパン、というように各話がつながっています。
登場人物は小学生から老人まで幅広く、お客さんの層も広いのが特徴です。
まごころドーナツについて
すれ違う男女の恋愛模様。
ちょっと疲れた帰り道は、「ベーカリー・コテン」が待っています。
この言葉のとおりに少しもやもやしたことがあったときにも、コテンのパンを食べると元気が出てくるようです。
結婚式を控えていた理央は秀明の態度に違和感がありました。
はい、私も浮気かと思いました。
違ったことにびっくり。
なるほどそういう理由かと。
コリアンダーの別名がパクチーって言うのは初めて知りました。
楽描きカレーパンについて
そういえば、普通にカレーライスを食べるときには『辛口・中辛・甘口』とか考えて辛口は辛すぎて食べられないから中辛がいいとか、甘口は全然辛くないから嫌だとか考えながら作るのに、カレーパンは辛さとか全く気にしたことがありませんでした。
何でだろう…。
そもそも、コンビニとかのカレーパンって甘口とか辛口とかって書いてなくないですか?コンビニで買ったカレーパンを見たときパッケージを確認しましたが、どこにも辛さレベルは書いていませんでした。
それに、カレーパンにおける辛さもあまり意識したことはなかったですが、中身に何が入っているかーーーこれもあまり意識したことはなかったと思います。
三代目が「カレーは恐ろしい食べ物だから」と言っていた意味がわかりました。
- カレールゥを使わず、スパイスから作るのか
- 甘口、中辛、辛口のどれにするのか
- カレーに使う肉は牛か豚か鳥か
ざっと考えるだけでもこれだけ考えることがあるのですよ。
カレーって奥が深いよね。
家でもカレーはよく作りますが、鶏肉があるからチキンカレーにしようって言ったら、旦那氏からめっちゃ抗議されたことを思い出しました。
鶏肉があるからカレーはチキンカレーにしようか
チキンカレーは辛口しか認めない!
辛口がないんだったら豚か牛だ!
あるものでいいでしょ!
チキンカレーは辛口って決まってるんだよ
…なんなのでしょうか、このこだわり…別に中辛のチキンカレーでもよくない?
結局この時は豚肉の中辛カレーになりましたが。
お店ではない家庭内でもこれなのです。
ですので、大衆向けのパン屋さんで売るカレーパンだと、何味にするかとか決めるのはとても大変だと思います。
そういえば地元のパン屋さんではしっかり『ワインビーフのカレーパン(甘口)』って書いてあったのですが、コンビニで購入したカレーパンにはそういう情報がないので何味で作ってあるんだろう…子どもも食べるから多分甘口だよね、とか考えてしまいました。
中身なんて、普通カレーの汁しか入ってないですよ。
にんじんでも出てくれば「わぁ、すごい大きな具が入ってる…!」と思うくらいです。
そんな、うずらのゆで玉子がごろっと出てくるパンで全種類違うパンだなんて!
超食べたい!美味しそう!
このお話を読んだおかげで、うっかり地元のパン屋さんに足を運びました。
あと親方のセリフがよかったです。
いい仕事ってさ、いいメシが作るんだよね
三代目が全体の主人公のはずですが、お客さん視点で書かれているので、色んな層のエピソードがあって楽しいです。
花咲くコロネについて
ちょうど他にも中学受験の小説を読んだあとだったので、こちらもタイムリーな話題でした。
そこにパン屋をどう絡めるのかと思ったら、おやつならぬ塾弁でパンを。
ですが花ちゃんが大好きなチョココロネは食べたらだめという制約が、ママから課せられました。
く、受験のためにチョココロネをやめさせるとは鬼畜な…!
と感じましたが、強烈なママにも考えがあるようで…。
お墓で出会ったおじいちゃんがいい味出してました。
ドーナツ、食べられるんだ…。へぇ…。
このあたりで「ベーカリー・コテン」の名前の由来についてのヒントがあるかなーと思ったけど、まだだった。
ちなみに私は『古典』だと思ってましたね。
人によって解釈が違うのが面白い。
縁結びカツサンドについて
このお話は、「ベーカリー・コテン」の三代目、音羽和久の視点で語られています。
昭和の雰囲気をパンの作り方まで遺しているようなお店で、新しくできたパン屋との違いをあげています。
確かに、今では機械で捏ねたり発酵させたりするのが主流なのかもしれませんね。
ホームベーカリーなんて家電ができて、家でも焼きたてのパンが食べられるくらいですから。
とはいえ、昔ながらの職人さんが焼いているパンもとてもおいしいので、できればなくなって欲しくないのが本音ですね。
便利になればいいというだけでは少し寂しい気もします。
今回は夏祭りの屋台のお話です。
…夏祭りのお話なんですが、正直「ごういーーーーん!」って叫びたくなるくらいでした。
まず、夏祭りの制約ですね。
本業と同じ品目は取り扱い禁止。
でもできあがったのはコテンのパンを使って、肉屋の豚肉を使ったカツサンド…。
たしかに双方カツサンドは扱っていなかったけど、でもパン屋が作った食パン使ってるし、肉屋が卸した豚肉使ってるしで、多少…大分強引のような気がしました(笑)。
肉屋の愛ちゃんへのアレもなかなか強引でしたね、でも楽しかったのでよし!
「ベーカリー・コテン」の由来も、いろんなところにヒントがありましたがようやくわかりましたね!
どんな意味かは本書を読んで頂くとして。
なるほど、それはわからないわけだ…。
でもタイトルにも通じる意味でとてもいいと思いました。
個人的に、地域の人たちと密着していて少し謎があるところが以前記事にした『本バスめぐりん。』シリーズに通じるものがあるな、と感じました。
まとめ
- 商店街でパン屋を営むパン職人の話
- なかなか自信が持てない三代目
- 色んな悩みを持つ馴染みの客が多い
- 元フランス料理人
今回はパン屋の職人を中心とした商店街の話でした。
出てくる商品もどれも美味しそうで食べてみたくなるようなものばかりです。
最初は何のことかわかりづらい各話のタイトルも、物語を読むにつれ意味がわかってきます。
こういう商品名にしたのか、とお客さんと結びつくようなパンの名前で、とてもほっこりできる小説です。
ぜひ1度読んでみてくださいね。
最後まで読んで頂いてありがとうございました!
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