こんにちは。元司書のシンカです。
今回は京極夏彦先生の『了巷説百物語』を読了しましたので、その感想を書きます。
相変わらずの鈍器本であり、『巷説百物語』シリーズの完結編でもあります。
読むのに重すぎて出先では読めず、半月ほどかかってしまいましたが、最後まで綺麗に終わってくれたのでサクサク読むことができました。
シリーズは全て読んでいるはずですが、何せブログを立ち上げる前に読んだ鈍器本ですので感想などはかいておりません。
記憶に新しい最終巻から感想を書きたいとおもいます。
1章ごとに関連する妖怪や幽霊などの絵図がありますので時々箸休めのようにその絵図を眺めたりできます。古典ですが。
落語や少年漫画のようなストーリーだったので最後まで楽しむことができました。
ぜひ、最後までご覧ください。
主人公はすべての嘘を見破る洞観屋
「化けの皮ーーー見切った」
『了巷説百物語』の著者について
『了巷説百物語』の著者は京極夏彦さんです。
1963年北海道生まれの方で、小説家であり、意匠家であります。
1994年『姑獲鳥の夏』でデビューされており、2作目の『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞を受賞されております。
江戸怪談シリーズの『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、『巷説百物語』シリーズの『後巷説百物語』で第130回直木賞、『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞、『遠野物語remix』「えほん遠野物語」シリーズなどにより、平成28年遠野文学賞、『遠巷説百物語』で第56回吉川英治文学賞を受賞されております。
他の著書に、『虚実妖怪百物語 序/破/急』『虚談』『いるのいないの』『ルー=ガルー忌避すべき狼』『厭な小説』『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジイサン』『ヒトごろし』『今昔百鬼拾遺 月』『書楼弔堂 待宵』『鵼の碑』など多数。
大体はシリーズも含めて読みましたが、まだ読んでない京極本があるのでいずれコンプリートしたいです。巷説百物語シリーズ、江戸怪談シリーズ、百鬼夜行シリーズは読破しています。
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『了巷説百物語』のあらすじ
化けの皮、見切ったーーー。文学賞3冠の<巷説百物語>シリーズ堂々完結!
<憑き物落とし>中禪寺洲齋。
<化け物遣い>御行の又市。
<洞観屋>稲荷藤兵衛。
彼らが対峙し絡み合う、過去最大の大仕掛けの結末はーーー?
文学賞3冠を果たした<巷説百物語>シリーズ堂々完結!下総国に暮らす狐狩りの名人・稲荷藤兵衛には、裏の渡世がある。
凡ての嘘を見破り旧悪醜聞を暴き出すことから<洞観屋>と呼ばれていた。
ある日、藤兵衛に依頼が持ち込まれる。老中首座・水野忠邦による大改革を妨害する者どもを炙りだしてくれというのだ。
敵は、妖物を操り衆生を惑わし、人心を恣にする者たちーーー。
依頼を引き受け江戸に出た藤兵衛は、化け物遣い一味と遭遇する。
やがて武蔵晴明神社の陰陽師・中禅寺州斎と出会い、とある商家の憑き物落としに立ち会うこととなるがーーー。Amazonより引用
『了巷説百物語』の読み方と登場人物
『おわりのこうせつひゃくものがたり』と読みます。巷説百物語シリーズの完結編ですのでおわりとタイトルにあるのでしょうが、読んでるとなかなかおわらないので混乱します。
なんせ1149ページありますので。え?どこまで読んだっけ?って感じですね。
- 稲荷藤兵衛(とうかとうべえ)…下総国で狐獲りをするのが本業。副業は、嘘を見破る洞観屋という二つ名を持つ。酒々井宿の小屋を建てて住んでいる。
- 又市(またいち)…化け物遣いの一味。小股潜りの又市と呼ばれる。作中ほとんど出てこない。ミステリアスな存在。でもみんな又市大好き。
- おぎん…山猫まわしのおぎんという二つ名を持つ。手に持った人形が凶器。
- 猫絵のお玉(ねこえのおたま)…藤兵衛の助っ人に呼ばれた若い女性
- 源助(げんすけ)…ましらの源助という二つ名だが、残念ながら漢字が出てこない。たいそう腕が立ち、腕力が強いらしい。本業はきこり。目と耳がいい。40近いそうだが若くみえる。
- 山岡百介(やまおかももすけ)…怪談話を集めて小説にする戯作者。化け物遣いの一味と関係があるらしい?
- 水野越前守(みずのえちぜんのかみ)…将軍の次の次に偉い老中首座。
- 中禪寺洲齋(ちゅうぜんじじゅうさい)…藤兵衛が関わることになった憑き物落としの陰陽師。百鬼夜行シリーズの中禅寺秋彦の曽祖父であり、江戸の中野に住んでいる
『了巷説百物語』の感想
主人公の稲荷藤兵衛たるお方は今回で初登場の新キャラらしい。
最後の最後に新キャラを出すとか粋なことをしますなぁ、京極先生。
江戸時代の江戸言葉が意外と難しくて読むのに時間がかかった。
小説を読んでいるというよりも落語を文字に書き起こしたような感覚。
読了までに半月かかった。
章ごとに関連ある化け物絵図があるのでライトノベルのイラストありの小説のようにサクサク読めたと思う。単行本なので重量があった。出先では読めないので、出かけている時は軽い文庫本を読んでいた。
妖怪絵図はふんだんにあるが、個人的には洞観屋と憑き物落としが黒幕を突き止めて乗り込んだ屋敷がからくり屋敷すぎて、妖怪絵図よりもミステリのように屋敷の図面がほしい。
十間座敷が続いてその先に渡り廊下があり、その先に黒幕がいることだけはわかったが、それまでの屋敷の見取り図などはないのでただ広いということしか理解できない。
部屋が右に傾いてずれているとか言い出したときにはお手上げだった。
付録にまで妖怪絵図を付けるなら、黒幕様の屋敷の見取り図を載せてくださいいいい!!
又市と百介について
終始藤兵衛視点で語られていくので、藤兵衛が会ったことのない山岡百介や又市が最後までミステリアス。こんなに分厚いのに本人の登場はほとんどなし。
しかし物語の中心には必ずいて、存在感は強い。
みんな又市のこと大好きなんだなあと感じた一冊でした。
江戸言葉が慣れなくて少し読みにくかったけど、これはこれで落語を読んでいるみたいで面白い。
ブクログで他の方が書いていたけど、本当に落語を文字に起こしているかのようであまり小説を読んでいる気にはならない。
サクサク読める、読ます技術は毎度ながらすごいなあと感じます。
憑き物落としについて
これは巷説百物語シリーズのはずなんだけれども、と考えながらよんでいました。
憑き物落としの中禅寺…はて、シリーズが違うし時代も違うようだが。
秋彦さんじゃないね。でも中野にいるぞ、親戚?
と思い混乱しながらぐぐりました。なんと京極堂の曽祖父だそうで。
百鬼夜行シリーズともリンクしてたのか!江戸怪談シリーズだけじゃないんか。
と思いました。思わずウィキペデア調べながらXでフォロワーさんに
「京極堂のおじいさんって人が書楼弔堂に出てきますよ!これとは別に!」
と教えて頂きました。ああ、積読が増える。
ありがとうございます。
作中で亡くなった娘さんは中禅寺家とは繋がりがないんでしょうか?
殺されたとき8歳だったし病気だからあれだけど…。
どういう系図なんだろう、と気になるところです。
どっかに解説ください。
作中のレイアウトについて
世界でいちばん透きとおった物語を読んで、そういえば京極堂シリーズでは見開き1ページが必ず新しい文章から始まっているとよんだけど、巷説百物語シリーズではどうなんだろうかと注意して読んでみました。
了巷説百物語もページをまたいで文章が続くことはありません。
しっかり右ページが始まるときは新しい文章です。
単行本だけではなく文庫本もしっかりレイアウトするんだそうで。
ただ長くて読みにくい文章ではなくきちんと考えられているんだなあと感じます。
今回で完結編ということで寂しいですが、まだ読んでいない京極作品あるので重ねて読んでいきたいと思います。
『了巷説百物語』が好きな人にはこちらもおすすめ
『百鬼夜行シリーズ』の『鵼の碑』をおすすめします。
『巷説百物語』シリーズとリンクしているものはいろいろありましたが、まさか百鬼夜行シリーズもリンクしているとは驚きでした。家系図ください。屋敷の図面ください。妖怪絵図は正直あってもなくてもいいです。
となるので、百鬼夜行シリーズをおすすめします。
こちらは中禅寺家の秋彦くんが本屋兼探偵をしながら事件を解決していくミステリです。
こちらも鈍器本です。
百鬼夜行シリーズ新作長編!
殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。
消えた三つの他殺体を追う刑事。
妖光に翻弄される学僧。
失踪者を追い求める探偵。
死者の声を聞くために訪れた女。
そして見え隠れする公安の影。発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆は、
縺れ合いキメラの如き様相を示す「化け物の幽霊」を祓えるかAmazonより引用
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まとめ
- 巷説百物語シリーズ完結編
- 単行本のページ総数は1149ページ
- 江戸っ子が話をするので江戸弁が多い
- 今回も化け物はいないが化け物遣いはいる
今回でシリーズ完結だと思うと寂しいですね。
作品同士でのリンクもあって楽しい読書時間でした!
分厚いわりには読みやすいのでサクサク読めます。
気になった方はぜひ読んでみてくださいね。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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