あなたは超能力を信じますか?
こんにちは、シンカです。今回は『屍人荘の殺人』シリーズ2冊目の、『魔眼の匣の殺人』を読んだのでその感想を書きます。
ミステリなのでなるべくネタバレはしないように頑張りたいと思います。
前回はパニックホラーな展開でしたが、今回は『予言』が絶対に当たるというサキミという老女に会いに行くところから物語が始まります。
予言は本物か?
回避は可能なのか?
結論は、『殺された人たちの人選に不満』はあったけど概ね楽しめました。
前回のように推しが出来なかったので、落ち着いて読めたと感じています。
9人が『魔眼の匣』に訪れましたが、その日はちょうどサキミの予言に当たる日でした。比留子と葉村は生き残り謎を解けるのか?
ぜひ、最後までご覧ください。
今回はサキミという予言者に翻弄される!人為的なクローズドサークル
『魔眼の匣の殺人』の著者について
『魔眼の匣の殺人』の著者は今村昌弘さんです。
1985年長崎県生まれの方で、、岡山大学を卒業されております。
2017年『屍人荘の殺人』で第27回鮎川哲也賞を受賞し、デビューしております。
同作は『このミステリーがすごい!2018年版』、<週刊文春>2017年ミステリーベスト10、『2018本格ミステリ・ベスト10』で1位を獲得し、第18回本屋大賞3位に選ばれるなど、高く評価されております。今最も注目される期待の新鋭です。
『魔眼の匣の殺人』のあらすじ
『魔眼の匣の殺人』は、クローズドサークル内で起こった殺人事件を解決していく物語です。
その日、”魔眼の匣”を九人が訪れた。人里離れたその施設の孤独な主は、予言者と恐れられる老女だ。
彼女は葉村譲と剣崎比留子をはじめとする来訪者に「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」と告げた。
外界と唯一繋がる橋が燃え落ちた後、予言が成就するがごとく一人に死が訪れ、閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。
さらに、客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白しーーー。
残り四十八時間。二人の予言者に支配された匣のなかで、生き残り謎を解き明かせるか!?
二十一世紀最高の大型新人による、待望のシリーズ第二弾。出版社より引用
『魔眼の匣の殺人』の登場人物
『魔眼の匣』に訪れた9人が事件に巻き込まれていく物語です。
- 葉村譲(はむらゆずる)…神紅大学経済学部一回生。ミステリ愛好会会長。
- 剣崎比留子(けんざきひるこ)…神紅大学文学部二回生。ミステリ愛好会会員。
- 十色真理絵(といろまりえ)…高校二年生。未来を見通す絵を描く予知能力者。
- 茎沢忍(くきざわしのぶ)…高校一年生。十色の後輩。オカルト好き。
- サキミ…未来を見通す予言者。
- 神服奉子(はっとりやすこ)…サキミのお世話係。
- 明智恭介(あけちきょうすけ)…元ミステリ愛好会会長。
タイトルは『まがんのはこのさつじん』と読みます。
なんと、匣の字がパソコンの予測変換で出てきません。
『魔眼の匣の殺人』の感想(ネタバレ含む)
今回はAudible版と小説版の両方を使って読んでいました。
前回の『屍人荘の殺人』では、普通に単行本で読んだのですが、思いのほかAudible版の朗読もとてもよかったのでそちらの感想も書きます。
Audible版『魔眼の匣の殺人』について
朗読は浅井晴美さんです。
『屍人荘の殺人』の朗読者と同じ方のようですが、私は今回の2冊目で初めて聴きました。
結論としてはとても聴きやすく、最後まで聴くことが出来ました!
登場人物は小学生から老女まで、幅広い年代の老若男女がいたわけですが、ひとりで演じているとは思えないほど、男女の声音、小学生や老女の声音を使い分けていて素晴らしかったです!
特に男性は小学生から壮年までいたのですが、ああこれは葉村くんの声だ、これは師々田さんの声だ、と聴き分けることができ、ひとり11役やっているとは思えないほど自然な語りでした。
途中から単行本を借りて来て、読み聞かせ状態で読んでいたほどです。
以前<物語>シリーズで声優さんたちが朗読していたものがあったのですが、全てのキャラが同じで違和感がものすごかったので、これほど11役を演じ分けられる演者さんはとても聴きやすい演者さんでした。
これなら次回もAudible版聴いてみたい、と思う出来でとてもよかったです。
真雁地区について
普段、サキミとサキミに仕えている神服奉子が2人で住んでいるのなら、泊まる部屋があるのは超能力を研究する施設だったからあるとして、食料問題は出てくるはずなんですよ。
そこに9人が来て11人に増えた。
にも関わらず、老女と女性しかいない施設なのにも関わらず、その日の夜にご飯が出て来て(レトルトカレーとはいえ)9人分の空腹を満たしています。
レトルトカレーも11人分用意できたのでしょうか?
行くよ、と連絡していないにも関わらず、食料が普通にあるのはおかしい気がします。
私も普段2人暮らしですが、多めに買っておくとは言ってもせいぜい一週間分くらい。そこに11人食べることになったら、ご飯に味噌汁、野菜炒めの簡単な料理でさえ、足りなくなるのでは?
来訪者たちは当たり前のように食べていますが、お金は払ったのでしょうか?
事件と関係ないことが気になってしまいました。
朝食も11人分用意して、普通に神服さんが用意している…。
絶対足りなくなる。
多分2回分くらいで足りなくなるよ、しかも買い出しにいけない状況でこれは…。
来訪者からお金取るべきでしょ。殺人犯も含めて、ただでご飯食べてるんだから。
鍋が出来るくらい食料揃ってるってどうなんでしょうね…。
11人がしばらく生活するって予言したのかな、サキミさんが。
アバウトな予言しかしないから正確に何人来ます泊まります、とかわかるわけじゃないし。うーん。
それとも、実はサキミさんがめっちゃ食べる人なのでしょうか。
9人増えてクローズドサークル状態なのに、三日くらい生活してますからね。
数は減ってくるとはいえ。
小学生の純くんとか、高校生2人はまだ未成年だからお金払えとは思わないけど、大学生以上の働いている来訪者はお金払ってくれと取り立てていいレベルだと思いますわ。
確かに最初葉村くんが作り置きしていたのかと疑問に思ってましたし、手伝いましょうかとか言ってたけど、他の来訪者の人たち、全然気にしないで食べるだけだったからね。
…挙句毒殺未遂事件のせいで食欲ないから食べないとか。
は?お金払え!食費を!とか思った私は、心が狭いのでしょうか…。
クローズドサークル内にも関わらず、11人から4人引いて、7人の食事(×3)を作った神服奉子さんに敬意を表します。
私が同じことやれと言われたらできない自信があります(笑)。
十色と茎沢について
十色についてはもう、色々言いたいことがあります。
最初のバスでのラッキースケベとか。
絵を描いて予言したことで逆に殺人犯だと疑われたり、死亡フラグが出てたり。
典型的な『死にそうなキャラ』でした。
でも、年齢が若くない?まだ高校生で、これから未来もある若者なのに。
あんな死に方は少し、かなり残酷ではないかと思います。
茎沢くんもね。十色とは違ってある意味不慮の事故だけど。
それでも、これからの若者がこんなクローズドサークルに閉じ込められて死んでしまうなんて、フィクションでも少し残酷だな、と感じました。
研究者のおじいさん、十色勤に対しても少し疑問があります。
サキミを一緒に連れていくのに、孫と一度も会ってなかったのか?
本物のサキミはどうしているのか?
研究ノートを十色が持っていたことも、サキミ本人と会っていないことも疑問でした。おじいさんには会ったことあるのかな、この子。
あと、研究ノートとかめっちゃFGO(Fate/Grand OrderというTYPE MOONから出ているスマホゲーム)の蓬莱島で研究日記つけてた徐福ちゃんを思い出して草はえました。
実はFGOのイベントやってないかな?この作者(笑)。
屍人荘の殺人の時も思ったけど、めっちゃFGOな要素が強くて違う意味で笑ってしまう。
比留子について
明智さんがいなくなったあと、てっきり最初の学食メニュー当てを比留子さんとやるのかと思ったら違って笑った。
寝坊か~い!
気を取り直して。
彼女は前作で言っていました。
「私には呪われた体質がある」。
それとわかっていながら、揉み消されるほど危険な『班目機関』について自ら首を突っ込む。
一介の女子大生にそんな事件が解決できるわけもないのに、ひとりで行こうとするところがなんなんでしょうね。
そしてそれを察知してわざわざついていく葉村くん。
事件のほうから寄ってくるのではなく、今回は自分から事件のほうに向かって行っています。
そして、事件がすべて終わってからの謎解き。
これは…。別にいらなかったのでは。
謎解きは必要かもだけど、事件を引き寄せる体質云々の設定がいらなかった気がします。
だって自分から事件に飛び込んで巻き込まれたから自然災害じゃないしね。
サキミの予言が確実に終われば、警察が来るだろうし。
警察が来る前にこの状況で謎を解かなきゃいけないって言ってたけど…。
うーん。
事件に自分から突っ込み、事件の探偵になるための椅子が用意されていた状況にしか見えませんでした。
自然に事件引き寄せてない、自分から事件引き寄せてる。
その他女性陣について
神服奉子さんの、名前が99ページで『泰子さん』と書いてしまっています。
単なる誤字なのか、それとも意図があるのか…。
冷蔵庫が壊れたときに、鶏肉を捨てていたけどそれは貴重な食料です。
私ならそのまま捨てずに、「冷蔵庫壊れてそんなに時間経ってないし急いで調理して食べよう、幸い人数が多いからすぐなくなる!」って思っちゃいますね。
確かに、病気になっても困るけどクローズドサークルで買い出しに行けない状況での貴重な鶏肉。何も捨てなくても。と思ってしまった貧乏性でした。
まあね…確かに、病人が出たら嫌だけど。悩めるクローズドサークルでの食事事情。
食事事情といえば、クローズドサークルのわりに緩いな、と感じました。
食堂はあっても缶詰だけ、とかそんな感じのミステリばかり読んでいたからでしょうか。
食事を用意してくれる人がいて、普通に食事が出来る。
11人のうち、4人しか死なない予言なのだから確実に生き残る人はいる。
ですので、クローズドサークルと言っても緊張感がイマイチ欠けると感じました。
十色勤のネズミの記述と、朱鷺野の「ネズミが出て眠れない」発言から、朱鷺野の部屋が本物のサキミが住んでいた部屋だったのかな、と思います。
師々田親子について
男女どちらかわからない、という感じでミスリードを狙うなら、純くんを息子って紹介せずに、子ども、とかって濁せばよかったのでは?
純って名前なら、男の子も女の子も両方いそうな名前だし。
それを言うなら茎沢くんもそうか…。名前が忍。
男性でも女性でも通じそうな名前です。
でも二人とも明らかに男なので、どちらかわからないなんてことはありませんでしたね。
純くんといえば、比留子さんがいなくなったとき、滝で姿を消したのに真っ先に林に向かったのはなぜ?君は比留子さんを探しに行ったんだよね?
比留子さんのスニーカーは滝で見つかったんだから、滝に行くのが普通では?
なぜ真っ先に林に行ったんだい?
意外と純くんも謎めいた行動をしていました。
師々田さんといえば、「ミステリなんて小学校で卒業した」とか言っていたのに、フェルト人形がなくなっていく現象を解説してた時。
葉村くんが「アガサ―」って作者名を言おうとしたところで、
「作品のネタをばらすつもりか。君はそれでもミステリファンかね」ってネタバレ許さん発言が入ったときは笑いました。
作者名とタイトルを言うのもだめなのか。なんて厳しい…!
おまけにばらしていいよっていわれても「マナーの問題だ」って言ってたからな…。
これも立派なネタバレですかね。ブログ書けなくなっちゃう…。(苦笑)
まとめ
- オカルト系の雑誌に「班目機関」の記述を見つける
- 葉村と比留子が調査に出かける
- クローズドサークルになり、殺人事件が起こる
今回は超能力という、オカルトチックなミステリでした。
しかし前回の屍人荘の殺人に比べたら普通のミステリになったんじゃないかと感じます。
事件よりも食料の方に気が行ってしまった『魔眼の匣の殺人』でした。
今回はAudible版で小説を聴いていましたが、思いのほか朗読者がよかったのでこちらもオススメしたいところです。
基本は普通のミステリなので、気になった方はぜひ読んでみてくださいね。
最後まで読んで頂いて、ありがとうございました。
クリックお願いします!↓↓↓
コメント